背負い続ける女~ソニン「ジグソーパズル」

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 ソニンにとってEE JUMPの活動停止=事実上の解散は、言うまでもなく不本意なことだっただろう。以来彼女には「不遇の女」のイメージが付きまとい、うたばんのマラソン企画は、結果的に目標を達成はしたものの、逆にそのイメージを増幅していた。
 そして発売されたソロ1stシングル「カレーライスの女」は、裸エプロンのジャケットの衝撃もさることながら、別れた男の好きだった料理を作りながら「なんもない なんもない」と呪うように繰り返す、やはり「不遇の女」の歌だった。
 次作「津軽海峡の女」では、自分の部屋でひとり「津軽海峡冬景色」を聴きながら孤独を噛みしめ、「東京ミッドナイトロンリネス」はまさにタイトルどおり。「合コン後のファミレスにて」は手元に歌詞の資料がないのだが、合コンで自分だけうまく行かなくて、深夜のファミレスでひとり悪態をつく、確かそんな歌だったし、「ほんとはね。」は思いを伝えられないまま過ぎ去ってしまった恋を振り返る後ろ向きな歌だ。

 ソロになってからのソニンは一貫して、喪失感、空虚さ、孤独、後悔など、人間のネガティブな部分を背負って生きる女を歌い続けてきた。
 そして今回のシングル「ジグソーパズル」は、それを全部ひっくるめて叩きつけたような激しい歌だ。以下、歌詞を全文引用する。


  『愛』『夢』『理想』『希望』それなりに手にしてそれなりの生活をしてる
  『愛』『夢』『理想』『希望』たまの休みに襲ってくる、虚しさは何でしょう?

  何を失くしたの?何を手にしたら
  胸の中のジグソーパズルは埋まるんでしょう?Maybe

  そう君だって、私もだって
  どこかで失くしたピースを外したまま生きる
  常に笑って、時折泣いて、忙しく日々に追われて
  見て見ぬフリをしてんだ、失くしたのはあの愛か?

  『愛』『夢』『理想』『希望』いつからか妥協して折り合いを付けて生きてる
  『孤独』『挫折』『リアル』『失望』現実を生きるには諦めが必要なんでしょ?

  幼い頃描いた“すべてを手にする大人”にはさあ
  なれなかったみたいだね、Maybe

  そう誰だって、誰しもだって
  思い通りには行かずに、自分の事を嘆く
  愛にすがって、夢にすがって、繰り返し希望見い出して
  失望を手に入れるんだ、失くしたのはあの夢か?

  そう誰だって、誰しもだって
  どこかで失くしたピースを外したまま生きる
  常に笑って、時折泣いて、忙しく日々に追われて
  見て見ぬフリをしてんだ、失くしたのはあの愛か?
  失くしたのは自分なのか?


 EE JUMPの頃のソニンには、10代アイドルの持つ突き抜けた明るさ、バカっぽさがあまり感じられなかった。そこには、在日コリアン三世という血がもたらす宿命的な重さが少なからず影を落としているということは否めないだろう。
 しかし、折りしも日本では今韓国ブームだ。降ってわいたようなにわかファンたちよりもはるかにそこに近いポジションにいる彼女にとって、今はある意味チャンスなのかもしれない。現に最近はその関係の番組出演が多いという。

 そこへこの歌だ。カップリングに、ライブでよく歌っているという尾崎豊“I LOVE YOU”のハングル語バージョンを入れてブームに目配せしつつも、そこに乗っかろうなんて下心は全く感じられない。商売的なことを考えれば、尾崎のハングルバージョンをA面にした方がより話題にもなるし売れるのは明らかなのにそうはしなかったところに、ブームをあざ笑い蹴飛ばすかのような反骨心すら感じられる。
 この歌の前では、テツ&トモの冬ソナ主題歌のカバーなどは、恥ずかしいくらいバカ丸出しの愚行にしか見えない。

 この激しい詞を支えるべく、曲もやはりハードだ。
 ソニン自らかき鳴らすセミアコの音は、不安や焦りを煽るかのように鳴り響く。インストバージョンで聴くと、さらに切実に迫って来て鳥肌が立つぼどだった。
 そして、時折聴こえるホイッスルの音が、妙に哀しさを感じさせる。

 人として生きることのダークサイドを凝縮したかのような名曲だと思う。

「在日っていうものは、全くのコリアンでもないし、日本人でもないし、在日コリアンっていう国籍なんだなっていうのをすごく意識してるんですよ。そういう国籍があるって捉えてるんです。」とソニンは言う。日本人でもない、韓国人でもないというアイデンティティの空白。
 しかし彼女は、その空白を過剰に嘆くでもなく、間違った何かで性急に埋めようとするでもなく、あくまでニュートラルにそれをそういうものとして受け入れて自分の一部にしている。
 それでいいんだと思う。失くしたピースが見つかった時、彼女は彼女でなくなる。そんな気がする。


 参考文献:Quick Japan Vol.50 「天然最強少女 ソニン」
 参考サイト:ソニン特集ソニン年表